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本当に読んだもの、聞いたもの、試したもので、よいと思ったものしか紹介しません。 マニアックじゃないけど少し偏った品揃えです。
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北方『三国志』、泣けますね。
ここで描かれる曹操も劉備も張飛も呂布も、みな血が通っています。

文庫版三国志完結記念セット(全14巻)

特に劉備、そしてそれを取り巻く張飛、呂布の魅力が傑出。
張飛、呂布については作者自身、「花を持たせたかった」と語っている通り、実にいい生き方、死に方。
そうです、北方『三国志』の魅力の一つは、死の描き方にあり。
熱く生を生き切った男たちのその死が描かれる毎に泣かずにはおれません。
それは決して陰湿な涙でなく、すがすがしく、また心の奥底が揺さぶられる涙です。

曹操はやはり一代の傑物として描かれています。
とるべき道、やるべき事をやる躊躇のなさ、進む事において実に果敢です。
そしてそれゆえの大勝利と大敗。その人の幅と奥行の深さ。
情愛と冷徹さ、寛容さと冷酷さ、
とにかく魅力に溢れた革命家です。

一方の劉備。
ここで描かれる劉備は、他の作品と同じように人格家、徳の将軍としての一面もありますが、それはあくまでも看板。劉備の数少ないPR素材として、側近が懸命に演出し支える姿が描かれています。
曹操と劉備は、基本的には同じような気質で、違いといえば、曹操が進む事に果敢であるのに対し、劉備は退く事において果敢で誤る事がないということと、やはり基本原則、志の相容れない部分での互いの相克、という描き方でやはりこのふたりの位置関係は非常におもいしろい。

劉備といえば、諸葛亮ですが、孔明も仙人のような描かれ方でなく生身の血の通う人間として描かれています。
特に、一般に三顧の礼とされる場面は感動的で涙が抑えることが難しいくらい。
中年期を迎え、志は大きくとも今だ流浪の将で先行きの見えない劉備が、20ほども年下の何者とも知れぬ諸葛亮を前に、その激情を吐露し、圧倒的な熱で口説き落としてしまう。何の儀礼も駆け引きもない、ストレート極まりない劉備の止むに止まれぬ熱情に読者も口説かれ、恥も外聞も捨てて、全身で頼み込むこの男の純真さと思いの熱さに心を揺さぶられます。

反面、呉の面々については作者はあまり好感を抱いていないようで、確か取材でも「呉は陰険」だから嫌いだ、のようなことを語っていたと思いまう。三代目孫権あたりになると、曹操・劉備という傑物の影に隠れているとはいえ、ほとんど魅力を発することなく、思えば、この国の志って何なのだろうか?と、思わず突っ込みたくなるような描かれ方。(因みに孫権だけが、物語の最終章においても存命。作家が男の生と死をテーマに描きたかったとすれば、生に魅力を感じない孫権の死がないことも納得)

最後に北方『三国志』の特徴として、北方氏の創作人物の登場と活躍があげられる。これらが結構魅力的な輝きを放っており、物語に精彩を添えている。史実に存在する人物よりも克明に描かれるこれらの人物描写に、作者の作家根性というか、骨格は借りても、自分の物語を構築するという意志を感じます。

北方『三国志』全13巻、これだけの数の男の生と死を味わえる小説は滅多とありません。


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